映画セッションのラストシーンのなんたる壮絶なカタルシス!



今日は目覚ましを7時半前後にセッティングしていた。しかし、悪夢というほどのものではないけど微妙に嫌な感じの夢によって飛び起きた。朝5時半だった。

このまま二度寝しても仕方ない、せっかくなので早起きでもしようと、昨夜の飲酒がちょっぴりまだ残っているような状態で起床。ただし、不思議と眠くはない。

いつも通り、珈琲を淹れて、朝のひとときを過ごす。その後になぜだか自分でもわからないけど突如、猛烈に映画セッションのラストシーンが見たくなった。否、体感したかったというべきか。


この物凄く厳しい先生、フレッチャーの理不尽な暴力には賛否両論、というか多くが厳しい通り越してただの体罰とか思うだろうし、この映画ではないけどちょっと前にツィッターで同じく体罰を振る舞うジャズの先生が問題になってあちこちで討論されていた。

その体罰云々だけに触れていたら本題から脱線してしまうのでまたの機会にして、、、


ラストシーンのこのカタルシスといったら!もう!!(以下、ネタバレ含むので未見の方はご注意)

私は裏を読むとかアレコレ映画以外の部分で考えないで、素直に映画にのめり込むので、フレッチャーと再会し、ドラマーとしてスカウトされた主人公が本番、楽譜を渡されずに演奏が始まってしまったときは主人公と同じく激しい動揺を隠せなかった。主に主人公側の視点で私も映画の中にいるから、すっかり騙された。もう絶望しかない。丸くなったと思いきや、ニーマンによって学校から追い出されたことをまだ根に持っていて、舞台で恥をかかされてしまった。

主人公も言葉で形容しがたい感情を抱きながら一度は退場する。そんな様子を見ていた父親が、舞台裏で息子を想って待ち構えている辺りが本当に優しいなあ、と思ったりした。そういう親子だからなんだけど、もし自分があの立場だったら誰も抱きしめてくれなくて、このやり場のない感情をどこに昇華すればいいのだ、と孤独に絶望している気がする。そういう親子関係だとか、それが親ではなく恋人かもしれないとか、そういう話ではなくて、父親がすぐに息子の異変に察知して駆けつけてくるその行動力、ありったけの想いにジーンとくる。映画抜きで、アメリカ人のこういう素直さや実現力が日本人とはやっぱり違うよなあ、と。日本でもあるといえばあるけど、当然のようにはない。


そんな話はさておき、一度は父親に抱きしめられるも、ニーマンは覚悟を決めてもう一度舞台に戻る。この時点では「まだやり残したことがある」というのもあるが「どうせなら暴れてやる!」という気持ちが強いと思った。「この野郎!」みたいな。少なくとも、フレッチャーの分かりづらい愛に対して確信づいたものはなかったと思う。

そして舞台に戻り、フレッチャーの MC をさえぎるように突如ドラムを叩き出す主人公。ここからのラストシーンまでのカタルシスが本当に素晴らしい。圧倒的だ。

映画を見終わったあとにレビューを見ながら考察していて気づいたんだけど、フレッチャーはいつもニーマンの代わりを用意していたけど今回は誰も用意していなかったんだよね。ニーマンと再会したときに語るフレッチャーの想いがすべてを物語っている。ニーマンを極限まで追い込ませたかっただけ。言い換えるなら、ニーマンを、音楽を、信じた上でのあの仕打ち。

私だったらニーマンのようにはいかない。ほぼ間違いなく絶望しながら退場してしまうだろう。フレッチャーも退場する彼を目で追いながら「お前も退場してしまうのか?止まれ!こっちへ戻ってこい!」と思っているようだ。本当にただ教職をクビになった腹いせだけなら、もっと無関心なはずだ。

そう考えると、すべてはニーマンのための演技とも見える。初見では単純に主人公が憎くて、けれど戻ってきて演奏を再開し、その凄さは次第に、彼に対するフレッチャーのつまらない怒りや憎しみなどもすべて包み込んでしまうほど……というふうにも思ったのだが、なんだかそうではない気がする(それだけではない気がする)。

ニーマンと再会した時点で、ここまでを考えてシナリオを用意していたとすら思うのだ。学校でも相当厳しかったわけだけど、一旦上げた上で激しく落とすこの仕打ちは正に極限状態まで主人公を追い込ますことであろう。もちろん、それでも駄目なら仕方ないと覚悟を決めていたというか割り切ってもいたと思う。


特に一旦演奏が終わると思いきや主人公がまだドラムを叩くことを止めようとしなかったシーン。すっかりその頃には「この野郎!」とかではなく「ニーマン!」とちゃんと名前で呼んでいる辺りに彼の優しさやら真意がこぼれていると思う。演奏を止めさせるわけでもなく、時には楽器を支えたりもして、困惑しながらもどんどんフレッチャーも高揚していく。

最後にお互いに顔を見合わせ、目元しかうつらないアップシーンでもはっきりと分かるフレッチャーの溢れんばかりの笑顔。「ニーマン!よくやった!!」と言っているようだ。


どうして早朝から見たくなったのか?心の埃を払いたかったのかもしれない。絶望した上での、その先の勇気をもらうような。そもそも理由なんてないのかもしれないけど、朝から心や身体がきちんとした気がした。