私が会社を辞めた唯一の理由



就職にしろアルバイトにしろ、会社・職場に何を求めるか、何をメリットとし、何をデメリットとするかは人それぞれだ。

私はつい最近辞めることを決意し、普段不在の店長兼マネージャーにそのことを電話で伝えた。一日置いても「辞める」こと以外の選択肢が思い浮かばなかったからだ。また、電話が失礼とは分かっていても、伝えるのが直前になるよりはずっとマシだと判断。

よく私は決断力や実行力に長けている、迷わない強い人だと他人から評価されがちなのだが、一理あっても十理ではない。私だって弱い人間なので、電話の前も心臓をバクバクさせていた。決断を下すのと、相手にそれを伝えるのとではまた意味合いが違う。やましい気持ちも一切ないからまだいいけど、それでも緊張するのは仕方ない。

ただ、予想通りでもあって、相手は「俺には君の選択を止める権利はないから」と、私が抜けることで割と大ダメージを与える状況にも関わらず、スムーズに話を終えた。


ちなみに、私はラブホテルの清掃員兼フロントである。週3日程度の契約だったのだが、いつのまにか1日置きの週4日に固定されていた。

ラブホのメリットはそれはもういくつも思い浮かぶのだが、最大のメリットはシフトに融通が利くことだ。裏を返せば、それが駄目ならよっぽどの事情や都合がない限り、さっさと退職すべきだ。

中には週6日で固定している人もいる。最初から休み希望が不要な人。こういう人にとっては場所および作業量によるけど、比較的楽に高収入が得られる。必然と訪れる仮眠時間も含めながら気楽に働き、月収36万円を得ている人も私は実際に知っている。

世の中のありとあらゆる厳しい仕事に比べたら確実にマシなはずで、そうでないと思ったなら向いていないし、そうでなければ自分の時間を得られながら高収入を安定させることもできるのでメリットは大きい。


私にとってもいくつか理由があるが、必ずしも楽だから選んだわけではないということは伝えておく。そして、以前の職場で働いたから分かるのだが、何よりも融通が利くことが最大のメリットだ。これは、よっぽど人手不足で過酷なラブホでない限りは果たせるもの。他の人たちの話を聞いていても同じ意見だったし、すぐに辞めることになったビジネスホテルですらフリーシフト制だった。そこのビジネスホテルが例外だとは思うが、急に丸々一ヶ月休むのもオッケーという
待遇の良さ。

今の職場にはちょうど6月頃に入社した。つまり、約4ヶ月以上、今月分を含めたら5ヶ月間勤めたことになる。面接時にも自分のちょっと複雑な状況を話した上で「連休はいつでもとっていい」「週3日で雇う」と言われていたのだが、いきなり「シフトは曜日固定にし、休み希望は一切とらせない」というルールに変わった。

また、何度か1週間近くの連休もとらせてもらったけど、これまでの職場と打って変わって、連休をとった人は恨まれる空気が出来上がっていた。

恨まれるとはいっても、私はそれなりというか、むしろ懸命に働いていたので、休み希望を出さないけど仕事をしない人よりは恨まれなかったのだが、それでも気分はよろしくない。

連休を許された上で契約されたにも関わらず「お前空気読めよ」と毎回休む度にその空気を感じるのには確かに疑問を抱いていた。


しかし、それを抜いたら比較的まともな職場で、人間関係も良好だったし、たまにマネージャーが不機嫌で八つ当たりしてきても私は気にも留めないレベルだった。周囲はそんなマネージャーにうんざりしていたけど、私がそこにいることを許されていることのメリットの方がはるかに大きかった。

だから「明日行きたくないなあ」とも思わなかったし、今日怠いなあと思って手を抜こうという発想すら生まれなかった。むしろ、これで時給1000円、1日7000円も貰えるなら楽勝だとすら思っていた。仕事がどれだけ激務でも私にとってはちょっとした準備運動、お金を貰ってジムに通うようなものなので都合が良かった。それもラブホを仕事に選んだ理由の一つ。何度も言うけど、楽かどうかは人それぞれで、捉え方や職場によっては過酷かもしれない。

あと、ルームメイクに限らずフロントですら、どんな奇抜な髪型でも、タトゥーが入っていても平気な職場なのも人によって嬉しいものだと思う。さすがに対面式(カーテンがなく、ガラス越し)のフロントでタトゥーを見せたらアウトだと思うけど、清掃員に関しては比較的緩い。そうでなければ、よっぽど身だしなみに厳しい職場なので辞めた方がいい。


今日辞めることを告げると決意して出勤したときも、特に仕事や人間関係に不満もなく、むしろ皆良い人たちばかりだとすら思っていたんだけど、一時の感情に流されたくはない。私の最大のデメリットはシフト固定で、ちなみに私は「月」「水」「金」「土」と、ほぼ1日置きの出勤で、2連休が一切とれない状態だったので、散々メリットも考えた末に辞めることを決意した。

この決断を下せたのは、他のナニモノでもなく過去に都内でラブホを経験しているからだ。休暇期間を挟んで都内のラブホに移籍してもいいわけだし、それをしなくても済むような人生に切り替えることに成功してもいいわけであって、どっちに転んでも良い結果が待っているのだ。

もちろん、次の職場が当たりとは限らない。私は生まれて初めて入社したラブホが大当たりだっただけであって、他の人たちの話を聞いていると外れを引いて即辞めたというパターンもある。そのときはそのときで、自由気侭にまたオアシスなる職場を見つけようかなあ、と今は思っている。

ラブホに限らず、アルバイトとしての職場なんて無数にあるのだから、自分が違和感を抱いたら「次があるから」と楽観的に考えるのも全然有りだ。ワガママだけど、私はアルバイトしているときですら多少の自由さや気楽さを確保したいので。だってしょせんアルバイトだから。それは決して頑張らないという意味ではない。前の職場ではリーダーなるポジションだったわけだし。


あと、都内の方が比較的若くて許容範囲が広い人たちは多い。田舎特有の固執したアイデンティティを備えたオバサンたちに囲まれて仕事するよりもずっと健全的だ。私がかつていた職場では、やる気の有無を抜いたら、各々が何かしらの特殊な分野に関わっていた。

中には本気の人もいて、今ではメジャーデビューしたミュージシャンや芸能人、俳優、家具職人、彫り師だっていた。けれど、首都圏から離れると同じ東京でもそういった独自の人生を歩む人たちは皆無に等しく、だからこそ私のような人に対しての理解度が薄まり、ちょっと休んだだけで顔をしかめる図式が生まれるわけだ。

特に年配のオバサンたちが揃うと、もう本当の意味で理解されることはないと断言していい。仲良くやってはいたけど、それは私が誰よりも仕事をして、反抗的な態度や強い意見を一切言わなかったら保たれた秩序のようなものだ。


今回の話はあくまでも私個人の都合の話。仮にシフトを固定されたとしても、安定した収入を得て、仕事後も余力が残るような仕事を探しているならやはりラブホはオススメだ。

とにもかくにも、私は辞めることを決意した。少しの間、一切働かなくても平気な期間も設けたので、その間に手を動かしながら改めて人生設計をしたいと思う。